ライセンスサーバーの冗長構成

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概要

Embarcadero ライセンスサーバー(以降 ELC)の冗長構成に関して説明します。


「冗長構成」とは端的に言えば、システム障害に備えて、通常構成とは別に予備のシステムを設け、障害が発生 した時でもサービスの継続が行えるように配慮したシステム構成の事を指します。

これらの構成は「二重化」とも呼ばれます。

ELC でも限定的な範囲での利用となりますが、冗長構成をサポートしています。

ELC のサーバー構成

ELC では、ライセンスサーバーとして機能を担うメイン系の構成となる「マスターサーバー」、そして待機系の構成となる「バックアップサーバー」があります。


バックアップサーバーは、マスターサーバーが何らかの理由により障害が発生した場合、マスターサーバーに代わって、その機能の役割を果たすというものです。

そして、マスターサーバーが復旧すると、今まで処理してきた作業をマスターサーバーへ移管し、バックアップ サーバー自身は、再度待機モードに入ります。


このように片方のサーバーがシステムダウンしても、もう片方がその役割を補うことによって、サービス自体は 停止せずに続行することができます。


ELC のデフォルトのサーバー構成は、ライセンスサーバー1 台(マスターサーバーのみ)による運用する方法とな り、冗長構成を行うためには、別途以下のような作業が必要になります。

(1)バックアップサーバーとして利用するワークステーションへ ELC のインストール 
(2)バックアップサーバーを有効化するためのホスティング 
(3)バックアップサーバーのコンフィグファイルの設定

このうち(1)は、マスターサーバーのインストールと同様の方法で行えます。 詳しくは、こちらの「2. ELCのインストール」を参照ください。

以降の節では、具体的な設定手順として(2)と(3)に関して詳しく見ていきたいと思います。

バックアップサーバーを有効化するためのホスティング

バックアップサーバーを有効化するためには、マスターサーバーと同様にライセンスのホスト設定(ホスティン グ)が必要になります。


ホスティングについては[こちら]の「3. ライセンスのホスト設定」を参照ください。

バックアップサーバーを有効化するためには、図1のように”Click here to here backup server support”にチェックをつけてください。

Thumb03000156ujpn.png

図1: バックアップサーバーの有効化


そして、バックアップサーバーとなるホスト名を入力してください。

バックアップサーバーのポート番号は、マスターサーバーと同じポート番号が使用されるため、変更することはできません。

バックアップサーバーのホスト名(オプションとしてホストアドレス)を入力後、”Next”を押してください。 図2のようにマスターサーバーとバックアップサーバーに対するホスト情報が表示されます。

Thumb03000157ujpn.png

図2: ホスト情報の確定


表示されているホスト情報で正しければ、”Finish”ボタンを押してください。そしてホスト情報を確定後、ラ イセンスファイルをダウンロードしてください。


ダウンロードしたライセンスファイル(embarcadero_xxxxx.zip)を展開し、このうちサーバー用のライセンスファ イル(server_xxxxx.slip)をマスターサーバーの<ELC>/conf フォルダへコピーしてください。


本章では、マスターサーバーを”jp-server01”、そしてバックアップサーバーを”jp-backupsvr01”として話を進めていきます。

バックアップサーバーのコンフィグファイルの設定

バックアップサーバーのコンフィグファイルの設定は、<ELC>/conf フォルダ内の elise.properties ファイルを エディタで開き、バックアップサーバーの設定に必要なプロパティを追加します。

プロパティ名 説明
isBackupServer boolean バックアップサーバーを有効にするには、このプロパティ を”true”に設定します。デフォルトは”false”
masterHost string マスターサーバーのホスト名、もしくはIP アドレスを指定します。
masterPort string マスターサーバーのポート番号を指定します。デフォルトの ポート番号「5567」での利用の場合は、省略可

図3: バックアップサーバーのプロパティ値


ここでは、使用しているポート番号はデフォルトの”5567”であるため、図4のように”isBackupServer” と”masterHost”という 2 つのプロパティを追加しています。

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図4: コンフィグファイルの設定


“masterHost”と”masterPort”の各プロパティは、実行する環境によって適切な値に置き換えてください。

冗長構成におけるサーバーの起動手順

冗長構成によるサーバーの起動手順は、原則的にマスターサーバー、バックアップサーバーの順で行います。


1. マスターサーバーの起動

マスターサーバーを起動すると、バックアップサーバーの応答を待ちます。 応答を待っている間は、マスターサーバーの<ELC>/logs/info ファイル内に以下のメッセージが記録されます。

Waiting for backup to connect...

マスターサーバーがバックアップサーバーの応答を待つタイムアウト時間は、5 分間です。


2. バックアップサーバーの起動

マスターサーバーとバックアップサーバーの間で接続が確立された場合には、マスターサーバーで設定されてい るライセンスファイル、ユーザーリストファイル、IP リストファイルなどがバックアップサーバーへコピーされます。 以下は、両サーバーの接続が確立後、マスターサーバーの<ELC>/logs/info ファイル内に記録されるメッセージです。

Waiting for backup to connect...
Received authentication request for backup server jp-backupsvr01 with lock jp- backupsvr01.
Backup server authentication succeeded.

赤字の箇所には、お客様が使用しているバックアップサーバーのホスト名(IP アドレス)に置き換わります。

以下では、2 つのエラーケースを紹介したいと思います。

規定時間内にバックアップサーバーからの応答がなかった場合:

以下のメッセージは、マスターサーバーの<ELC>/logs/info ファイル中に記録され、マスターサーバーは自動的 に停止します。

Timed out waiting for backup to connect. 
Shutting down…


マスターサーバーより先にバックアップサーバーを起動した場合:

以下のメッセージは、バックアップサーバーの<ELC>/logs/info ファイル中に記録され、バックアップサーバー は自動的に停止します。

Failed to download master files...
BSlipManager initialization failed, program aborted
Failed to establish connection with host jp-server01 at port 5567: Connection refused: connect

赤字の箇所には、お客様が使用しているマスターサーバーのホスト名(IP アドレス)とポート番号に置き換わります。

バックアップサーバー運用時における注意点

マスターサーバーがダウンし、バックアップサーバーがメインのライセンスサーバーとして運用している間は、 以下のような制約があります。


(1)ユーザーリストファイルに関する編集が行えない

バックアップサーバーでは、ユーザーリストファイルの情報はマスターサーバーで保持されているファイルをコピーして使用します。

そのためバックアップサーバーが保持するユーザーリストファイル(userlist.txt、userlist-concurrent.txt) に対して、ユーザーの新規追加や編集を行なうことができません。


(2)ライセンスをオフラインで利用することができない

バックアップサーバーによる運用中は、指定されたユーザーに対するライセンスのチェックアウト(オフライン)が行えません。

オフラインで利用できるようにするには、マスターサーバーを復旧する必要があります。


(3)マスターサーバーがダウンした後、72 時間が経過するとバックアップサーバーも停止する

バックアップサーバーとして運用できる最大期間が設けられており、それが「72 時間」となっています。

この時間内にマスターサーバーが復旧できない場合には、規定時間が経過後バックアップサーバーも停止します。

バックアップサーバーが起動可能な残り時間は、Web管理画面のサーバーステータスで確認することができます。


Thumb03000161ujpn.png

図5: サーバーステータス


例えば、バックアップサーバーの Web 管理画面にログインするには、以下の URL へアクセスします。

http://jp-backupsvr01:5580

ここでは、Web アクセスのポート番号として、デフォルトの「5580」を使用しています。

ログイン後、図5のように"Server Status"の"Shutting down In:"という項目で、バックアップサーバーが シャットダウンするまでの時間が表示されます。

この項目は、バックアップサーバーがメインに昇格していないと表示されません。

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