10.4 Sydney - Release 2
RAD Studio 10.4.2 Athens の更新版がリリースされました(2021年2月24日)。
RAD Studio 10.4 Sydney - Release 2(別名 10.4.2)がインストール可能となりました。 10.4.2 は、10.4 および 10.4.1 の機能セット上に構築されており、製品全体にわたって既存機能の強化と、新機能の追加が行われています。 Delphi 10.4.2、C++Builder 10.4.2、および RAD Studio 10.4.2 が、有効な更新サブスクリプションのユーザーにダウンロード可能となっています。 RAD Studio 10.4.2 には、品質向上に重点が置かれているだけでなく、機能追加を行われています(以降、詳細参照)。 RAD Studio 10.4.2 には、10.4.1 以降のすべてのパッチ修正が含まれています。
目次
10.4.2 のインストール
すでに 10.4 Sydney または 10.4 Sydney - Release 1 をインストールしている場合、10.4 Sydney - Release 2 をインストールするには、完全アンインストール後に再インストールする必要があります。アンインストール プロセスの過程で、設定の保存に関するオプションを確認することができます。 これは、デフォルトで有効になっています。 別途、拡張設定移行ツールを使用して、設定を保存することも可能です。
10.4.2 における製品領域での主な強化
クラス最高の Windows アプリケーションのサポート
RAD Studio は、ネイティブ Windows アプリケーション開発のためのベスト ライブラリである、Visual Component Library(VCL) を提供しています。10.4.2 は、10.4 および 10.4.1 で導入された新しい VCL 機能およびコンポーネント上で構築されており、そこに、新たな VCL コンポーネント、拡張された Windows ストアのサポートなどが導入されています。
新しい VCL ネイティブ Windows コントロール
新しい VCL TControlList コントロール
RAD Studio 10.4.2 では、新しい柔軟で可視化されたリスト コントロールが導入されています。この新しい VCL コントロールは、非常に長いリストを処理するためn高パフォーマンス コントロールとして設計されており、カスタム UI 設定オプションで完成させる最新のルック&フィールを備えています。
FireMonkey の ListView 項目デザイナと同様、この新しい VCL TControlList では、listview 項目のレイアウトを設計することができ、その後、リスト内の項目それぞれに対して(仮想的に)複製されます。TControlList は、開発者が好みに合わせてカスタマイズできる単一列と複数列の両方のレイアウトを提供し、完全に仮想化されているため、リストは数千から数百万もの項目を処理でき、非常に高速なスクロールを提供します。外面に合う項目のみを計算および表示するだけでなく、リストはインメモリ ビットマップを使用して、項目のコンテンツをキャッシュします。この新しいコントロールは、高 DPI オプションと VCL スタイルをサポートし、完全に LiveBindings に対応しています。
コントロールには、開発者が、下記のような数多くの定義済みレイアウトを使い始められるよう、ウィザードが含まれています。他にも含まれているものには、新しい TControlListButton コンポーネントがあります。これは、TControlList と共に使用されるよう設計されており、3 つのスタイル - プッシュ ボタン、ツール ボタン、リンク - で構成されており、TSpeedButton に似ています。
詳細については、TControlList を参照してください。
新しい VCL TNumberBox コントロール
新しい VCL TNumberBox コントロールは、モダンな外観の数値入力コントロールで、Windows プラットフォームの WinUI NumberBox コントロールに似ています。このコントロールは、整数、指定された 10 進数と適切な形式のセットを持つ浮動小数点数、および通貨値の入力をサポートします。
同様の機能を備えたサードパーティのコントロールもありますが、VCL にははるかに制限されたSpinEdit コントロールしかなく、UI は古く、整数に制限されていました。
新しいコントロールはモダン UI であり、VCL スタイルをサポートしており、高 DPI 対応、そして、ビジュアル スタイルや動作を調整するための多くの追加プロパティが用意されています。このコントロールでは、すべて構成可能な、拡張可能なマウスおよびキーボード入力オプションを提供しています。式の入力が可能で、ユーザーは式(たとえば、43 * 3)を入力して、編集に表示される結果(この場合は129)を確認できます。
詳細については、TNumberBox コントロールを参照してください。
Windows ストアのパッケージングが簡単に
RAD Studio 10.4.2 リリースでは、Microsoft Store および Enterprise のデプロイメント用に、Microsoft が新たに推奨する Windows アプリケーション パッケージング フォーマット、MSIX をサポートしています。
10.4.2 における IDE の MSIX 統合サポートは、既存の APPX サポートに変わるもので、同様のプロジェクト構成オプションで提供することにより、移行プロセスを簡単にしています。MSIX サポートには、以前デスクトップ ブリッジと呼ばれていたテクノロジが組み込まれており、これは、Microsoft 社の Project Reunion (Windows プログラミング API モデルの基盤を再定義するプロジェクト)の柱の 1 つです。
VCL や FireMonkey をアプリケーション フレームワークとして選択している Delphi および C++Builder の Windows 開発者は、この新しい機能の利点を享受することができます。MSIX は、Microsoft Store を介して、Windows アプリケーションを Windows 10 デバイスに転送する手段です。
詳細については、Windows MSIX を参照してください。
Konopka コンポーネントの改善されたスタイルのサポート
Konopka Signature VCL Controls(KSVC)は、Delphi および C++ Builder VCL アプリケーションの、200 を超える Windows UI コントロールおよびデザイナーからなる人気のスイートです。更新サブスクリプションのお客様は、GetIt で無料アドオンとして利用できます。VCL スタイル アーキテクチャは 10.4 で大きく拡張され、高 DPI グラフィックスおよび 4K モニタをサポートするようになりました。10.4.2 では、VCL スタイルとより統合するため、KSVC ライブラリに数多くの拡張と更新が行われています。
新しいバージョンの KSVC は、更新サブスクリプションのお客様は、10.4.2 IDE の GetIt パッケージ マネージャより、無料アドオンとして入手可能です。
新しい TEdgeBrowser 拡張子
10.4 より導入された TEdgeBrowser VCL コンポーネント(Windows 10 Chromium ベースの Edge WebView2 コントロールのラッパー)が更新され、Microsoft のWebView2 コントロールとその SDK の GA バージョンがサポートされるようになりました。互換性の向上に加えて、このコンポーネントは、ファイル キャッシュ管理とカスタムWebView2 バージョンの使用のサポートが強化されています。
詳細については、TEdgeBrowser を参照してください。
より高速なオンボーディングおよびアプリケーションの開発のための、新たな開発生産性とユーザー エクスペリエンス機能
RAD Studio 10.4.2 には、初心者の開発者も経験豊富な開発者も共に魅力的なアプリケーションを迅速に構築できるようにする新たなツールや、手早い製品のバージョン アップグレードのための拡張移行ツール、RAD Studio のインストール自動化のための新しいサイレント インストーラ、などが含まれています。
新しい開発者のオンボーディング プロセスを簡素化し、新しい GetIt パッケージや RAD Studio にその時々に応じてインストールできる追加機能を強調表示する取り組みの一環として、IDE のウェルカム ページに、注目の GetIt パッケージからなる新しいセクションを追加しました。GetIt パッケージは IDE にすばやくインストールでき、サンプル プロジェクトはパッケージのインストール後に自動的に開かれるため、初心者の開発者も経験豊富な開発者も同様にすばやく作業に取り掛かることができます。
IDE アプリケーション ウィザード - 低コード アプリケーション ウィザード[1]
今後、拡張した ToolsAPI サポートで IDE をさらに公開していく Embarcadero のイニシアチブの一環として、10.4.2 には FireMonkey 用の新しいアプリケーション ウィザードが含まれています。これらのウィザード(GetIt でインストール可能)では、RAD Studio 開発者は、ウィザード インターフェイスを介して数多くのパラメータを指定することにより、アプリケーションを手早く一から構築することができます。これには、数多くの(今日のほとんどのアプリケーションで見られる主要な画面の代表ともいえる)ビルド済みフォームの選択、基本的なフォームのやり取りのロジックの定義、アプリケーション テーマの選択、数多くのデータベースへの接続などの機能が含まれており、すべてが一行のコードも記述することなく実現できると共に、逆に Delphi や C++ のコードを記述することで完全にカスタマイズすることも可能です。即利用可能なウィザードを提供することで、 チームはチーム内の新たな RAD Studio 開発者のオンボーディングにかかる時間を劇的に削減することができます。また、熟練した VCL および FMX の開発者は、これらをより効果的な手段として利用し、今日の UI ガイドラインに即した、より魅力的なユーザー インターフェイスを作成することができます。
- ↑ 10.4.2 リリース後まもなく GetIt にて配信予定
IDE の向上
RAD Studio IDE では、多くの開発者の生産性にフォーカスを置いた機能強化がなされています。その一環として、IDE の応答性に注目しました。これには、IDE が長めの操作(大きなプロジェクト グループを開くなど)を行っている間、何をしているかを示す、新しい進捗ダイアログが含まれています。私たちは、ライブラリ パス管理を更新し、パスを絶対パスとの間で、そのパスにおいて環境変数を使用する形式に変換する機能を追加し、インストール時にプロジェクトや IDE をより簡単に構成できるよう、またソース コードが場所に依存しないものにできるようにしました。これは、多くのサードパーティ コンポーネントを含む大規模なアプリケーションの複雑なレイアウトを管理する場合や、将来新しい IDE バージョンにアップグレードされるプロジェクトを構成する場合にも役立ちます。
10.4.2 では、開発者はフォーム デザイナでも作業でき、また同時に同じユニットの基とするコードを別の編集ウィンドウで編集し、場合によってはセカンダリ モニターに表示させることもできます。
また、Mountain Mist と呼ばれる新しいスタイルもあり、従来の IDE カラーを反映しています。
リモート デスクトップ経由で RAD Studio にアクセスする際の改善点もあり、在宅勤務の方に有用でしょう。プロジェクトへのプラットフォームの追加における改善。そして、改行が混在するユニットを検出し、それらを CRLF に正規化する機能もあります。
最後に、メッセージ ペインにおいて〔F1〕を押すと、コンパイラ メッセージやコンパイラ エラーについてヘルプが開かれるようになりました。
支援機能(LSP)における改善点
Delphi の 10.4 および C++ の 10.3.x で導入された、RAD Studio の LSP(Language Server Protocal)のサポートは、このリリースで大幅に拡張され、より優れ、より高速で、より信頼性の高い支援機能を提供しています。これには、コード補完、パラメータ補完、シンボル情報、その他多数が含まれています。
前のバージョンに比べ、10.4.2 LSP では、Delphi 用エラー インサイトに対して、数多くの新しい機能が追加されています: エディタには、エラーだけでなく、ヒントや警告にも、色付き下線が表示されるようになりました。これにより、コード エディタで潜在的で重要な問題を確認できます。エディタのステータス バーにおいては、現在のファイルのエラー、警告、ヒントの状態の概要を示し、エディタのガターにおけるエラー、警告、ヒントのインジケーターは、コードをスクロールする際に問題の場所が見つけやすくします。そして、問題のコードに対する強調表示の新しい方法により、疑問視しているコードが判別しやすくなっています。
unit 句におけるコード補完に対しても大幅に機能強化されています: プロジェクト ビューでは、LSP サーバーの現在のスタータスを表示し、いつ解析し、いつ準備完了となるのかわかるようになっています。XMLDoc の表示を含むパラメータ補完も改善されています。また、〔Ctrl + クリック〕ナビゲーションによるコード把握の改善では、‘inherited’ キーワードでの〔Ctrl + クリック〕などが可能になっており、これにより、はるかに堅牢で機能的なナビゲーションが実現されています。そして、その他のエディタ機能では、〔Ctrl + Shilf + 上/下〕キーによるメソッド宣言や実装間での移動などを含め、LSP サーバーへその実装が移植されています。また、汎用メソッドとクラスについても改善が行われており、ツールチップ インサイト、パッケージやパッケージを使用するコードでの支援機能の利用に対するサポート強化などがあります。
C++ では、コード補完相互作用が大きく改訂されました。重要な品質改善が複数実装されており、国際文字、インデックス作成などの問題に対応しており、適切に構成された C++ プロジェクトにおいて堅牢なコード補完機能を提供します。
強化された移行ツール
バージョン、更新、およびインストール間で IDE 構成をコピーするのに役立つ移行ツールが大幅に更新されました。
移行のタイプ(バージョンからバージョン、バージョンからファイルなど)を選択すると、ツールは設定の拡張リストと 3 つのプリセット構成から選択できるようにします。また、開発者は FireDAC、デスクトップ、プラットフォーム、フォーマッター構成ファイルなどの追加の構成ファイルを含めることができ、バージョンからバージョンへの更新プロセスを大幅にスピードアップできます。
サイレント インストール
RAD Studio 10.4.2 は、UI 操作なしで行う、Delphi、C++ Builder、および RAD Studio のサイレントな自動インストールをサポートしており、個々の開発者や、大規模な開発チームのデプロイメント、および IT プロフェッショナルに、高速で効率的なインストールの選択肢を提供します。
サイレント インストールは、追加で、任意のコマンドライン パラメータを、セットアップ プログラムに渡すことで有効にできます。サイレント インストーラにより開発者は、コア IDE と、そのエディションで使用可能なプラットフォームおよび機能をインストールできます。詳細については、「サイレント インストーラ」を参照してください。
FireMonkey プラットフォーム サポートの拡張
RAD Studio 10.4.2 には、最新の Apple OS および Android OS のバージョン(プラットフォーム サポートは製品によって変わります)に対するサポートが含まれています。
Apple OS プラットフォーム サポートの拡張
iOS 14 のサポート(Delphi および C++)
RAD Studio 10.4.2 は、iOS 14 App Store 対応アプリケーションの構築、iOS 14 SDK のターゲット設定、および iOS14 デバイスでのデバッグをサポートします。開発者は、企業内でのデプロイメントのための、アドホック配布をターゲットとすることもできます。
macOS 11 Intel のサポート(Delphi)
Delphi 開発者は、FireMonkey フレームワークを使用する Intel ベースのアプリケーションで macOS 11 BigSur をターゲットにできます。また、デフォルトの ICNS ファイルでの新しい 2x イメージに対するサポートも含まれています。Delphi 開発者は、macOS 64 ビット アプリケーションを、macOS App Store 用にも、ローカルで、または自分の Web サイトを介して配信するようにも開発することができます。
Android 11 のサポート(Delphi)
Delphi 10.4.2 には、Android バージョン 11 でのデプロイおよびデバッグに対するサポートや、Google の Play Store での 64 ビット アプリケーション サポートで必要となるアプリケーション バンドル形式へのデプロイメントに対する大きな改善が含まれています。
主な Delphi の新機能
コンパイラ パフォーマンスの向上
35 以上の異なるコンパイラの最適化により、Delphi コンパイラのパフォーマンスが大きく改善されました。コンパイル時間での効果は、ユーザーのコードベースによって変わるとはいえ、非常に大きな向上を示唆するレポートを見てきました。そこでは、以前の 10.4 リリースに比べ、コンパイル時間が数分の 1 に短縮されています。これは特に、大規模アプリケーションを開発するユーザーに有益です。
支援機能の強化
LSP テクノロジをベースとする Delphi の新しい支援機能のサポートは、10.4.2 において大きく拡張されています(開発者の生産性向上に関する前述のセクション参照)。
C++ Builder の主な機能
C++Builder のコード補完が大きく改訂され、適切に構成されたプロジェクトで堅牢なコード補完が可能になりました。また、リンク時にデバッグ情報を処理するための新しいアプローチにより、64 ビット Windows リンカで必要となるメモリ使用量と、アプリケーションの出力サイズが大幅に削減されました。最後に、例外処理が改善され、STL も更新されており、優れたアプリケーションの動作が提供されます。
スプリット DWARF によるリンカのひずみの低減
C++Builder 10.4.2 では、Win64 リンカでのメモリ使用の問題について、大きく改善されています。
C++ Win64 ツールチェーンは、ELF64 オブジェクト ファイル形式と Dwarf v4 デバッグ ファイル形式を使用しています。デバッグ情報は、よく非常に大きなサイズになり、それはリンカによって結果のバイナリにリンク付けされ、ilink64 のメモリ逼迫の状態を起こします。10.4.2 の C++Builder では、リンカが処理する費用のあるデータ量を大きく削減する、新しいテクノロジが含まれています。それは、デバッグ情報を複数のファイルに分割することで行われており、リンカは、その後、実行可能コードと少量のその他の情報のみをリンク付けするようになっています。これが、「スプリット DWARF」と呼ばれます。デバッグ情報は .dwo ファイル(dwarf オブジェクト)に入れられます。
Win32 インストラクション セット
デフォルトのターゲット CPU として、Clang ベースの bcc32c/x がデフォルトで、「i386」から「pentium2」になりました。これにより、より優れたコードの最適化が可能になりますが、主な利点は、デバッグ モードでのレジスタ スピルが減少することです。
例外処理と RTL
10.4.2 では、例外処理システムの大規模な見直しが行われました。モジュール内とモジュール間(例外を DLL から EXE に送出するなど)の双方で、C++ 言語の例外、SEH、および OS 例外が見直されています。これは、アプリケーション全体だけでなく、例外を発生させる一部の Windows API などの異常なケースにも役立つでしょう。
RTL はまた、Dinkumware STL の最新バージョンを同梱しています。
ライブラリ
さらにいくつかの主要なオープン ソース C++ ライブラリが、GetIt で利用できるようになります。これは、これらの強力なライブラリを独自のアプリケーションに簡単に統合できるようにするだけでなく、C++ Builder の最新バージョンが一般的な C++ コードにもたらす互換性を示しています。
さらなる強化点
私たちは、複数の製品分野の品質強化と改善に、多大な努力を払っており、特に次のことを行っています:
- 多くのビジネス アプリケーションがやりとりする必要のある SOAP Web サービスとの統合。これにより、WSDL インポート ツールと SOAP クライアントの呼び出しが向上されています。
- RAD Studio RTL の一部である並列プログラミング ライブラリは、最新のマルチコア CPU を活用できるマルチスレッド アプリケーションを記述するための最新のスタイルを提供します。
- デバッガにおける、汎用コレクション オブジェクトの情報の表示。これは、新しい固有のデバッグ ビジュアライザの導入によるものです。
- データベースおよびリモート データ アクセス テクノロジでも一部改善がみられ、それは FireDAC InterBase、SQLite、PostgresSQL、および Oracle 統合ドライバ、REST クライアント ライブラリ、AWS、および Azure のサポートなどに及びます。
品質、パフォーマンス、安定性への継続的な取り組みの一環として、社内で見つかった膨大な数の問題、および、Quality Portal でお客様から報告された 650 を超える問題も修正されています。